2006年 09月 27日
資料紹介7 絵はがき集「摩耶山ケーブルカー CABLECAR ON MOUNT MAYA」、赤西萬有堂? 以前にも指摘したように、1925(大正14)年1月のケーブル開通以来、摩耶山の観光化は進展し、それに付随してリーフレットや絵はがき類も少なからず発行された。ここれで紹介する絵はがき集もその1つであり、8枚の絵はがきから構成されている。第二次大戦前に製作された絵はがきの場合、その発行年代は勿論、製作者についても記されていない場合が多いが、今回紹介する絵はがきには、裏面に「KOBE AKANISI」と記されている。これがどのような業者であったか、私自身はよく調べてはいないが、ネット上の情報(公文書館や資料館・博物館、あるいは古書店のカタログなど)から、当時神戸に「赤西萬有堂」という業者が、リーフレットや地図類を発行していたことを確認できる。よってこの絵はがき集も同社によるものと推定される。 ここで紹介するのは、8枚のうちケーブル開通に合わせて開業したとされる「摩耶山遊園地」に関するものである。残念ながらここには、マヤカン(摩耶山温泉ホテル)を写したものはないが、それに付随していた遊園地の雰囲気、あるいはその盛況ぶり等をうかがわせるものとして興味深い。ちなみに他の5枚のうち、1枚は「(摩耶名物)峻険のケーブルカー Mayasan Keburu」と題されたケーブルの情景(以前紹介したものと類似)、4枚は焼失前の天上寺のもの(本堂・塔・奥の院・石段)であった(後ろに提示)。 カバー表紙 絵はがき1 (摩耶名物)頂上摩耶駅 Mayasan Mayaeki 絵はがき2 (摩耶名物)休憩場外景 Mayasan Kiukeisho 絵はがき3 (摩耶名物)摩耶山休憩所 Mayasan Kiukeisho 六甲摩耶鉄道株式会社の社史(『六甲山とともに五十年』、1982)によれば、「鋼索鉄道の開通と同時に(中略)摩耶駅付近に食堂、売店などを建設、遊園地には展望台、無料休憩所、遊戯具などを設備し、特に1929(昭和4)年11月には摩耶山温泉を竣工」(46㌻)と記されている。また同書に記された年表によると、以下の施設が確認される。 1925(大正14)年5/31 「摩耶駅付近に摩耶食堂開業 他に貸売店8戸開業」 1926(大正15)年2月 「ケーブル遊園地200坪開拓 遊戯具設置、桜、楓、桃、梅等数百本を植樹」 同年 6月 「ケーブル遊園地に動物小屋新設」 1930(昭和 5) 年4月 「摩耶山遊園地内に、約4000石を容れる鉄筋コンクリート造貯水池完成」 1936(昭和11)年3/20 「摩耶駅西、元食堂の一部を改造し喫茶店を開業」 このうち、ここに紹介した絵はがきからは、休憩所、動物小屋、遊戯具、植樹された樹木および、いくつかの店舗らしき建物を確認できる。また樹木の状態、および人々の服装から、季節は冬期と考えられる。これらからこの絵はがき集の発行年代は、どんなに早くても1926(大正15)年の年末頃と推定される。またケーブル・遊園地・天上寺と、摩耶山全体をカバーするような構成に対して、摩耶山温泉ホテルが欠如していることから、その開業以前(1929(昭和4)年11月)に発行された可能性も考えられる。 ※補足(2009.10.09):絵はがき1 (摩耶名物)頂上摩耶駅 Mayasan Mayaekiを注視すると、駅舎・ホーム屋根の背後に、マヤカンへの覆い付きの渡り廊下らしきものを確認することができる。したがって、この絵はがき集の発行は、1929(昭和4)年11月以前ではなく、廊下が完成した1930(昭和5)年4月以降と判断される(摩耶観光ホテルについて15(資料12)、2008年4月参考)。 絵はがき4(摩耶名勝)峻険のケーブルカー Mayasan Keburu 絵はがき5(摩耶名勝)峻急なる石段 Maya Ishidan 絵はがき6(摩耶名勝)頂上の塔 Mayasan Chojyo 絵はがき7(摩耶名勝)天上寺本堂 Mayasan Tenjyoji 絵はがき8(摩耶名勝)奥の院 Mayasan Okunoin 絵はがき9 裏面
by nk8513
| 2006-09-27 02:00
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Comments(7)
はじめまして。
偶然たどりついたのですが、面白いページですね。 昔、吉川晃司主演映画のロケ地になっていましたよね。 それで、15年ぐらい前に高校時代の友人と二人で遊びに行った記憶があります。
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nk8513 at 2006-10-21 00:32
コメントありがとうございます。「ユー☆ガッタ☆チャンス」に登場するマヤカンは、現在とちがってかなり綺麗な印象を受けます。ちなみに15年前、私は大学サークルの飲み会で何度かマヤカンに泊まったことがあります。
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at 2009-11-27 12:23
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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博士Y
at 2016-03-04 03:46
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"摩耶花壇”に興味があって、いろんな頁に掲載された画像を追いかけています。昔の絵葉書は大変貴重で、歴史を辿る貴重な情報になると思います。
偶然にも、当時の「摩耶花壇」のレストラン内部を撮影した写真を入手しましたが、テーブルの配置やとカウンターの様子から、貴方別掲の絵葉書集、ホテル周辺の遊園地などを紹介した絵葉書集の一枚、「摩耶食堂」内部と同じ場所のものと思われる写真です。
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nk8513 at 2016-06-08 07:43
返信遅くなり申し訳ありません。摩耶花壇の件、大変興 味深い話です。正確な時期を失念しましたが、私は10年ほど前に「摩耶食堂」等の絵はがきを入手したのですが、これがどこにあったものか、よくわかりませ んでした。ケーブル会社の社史に同名の施設がありましたので、これがそれに該当すると解釈いたしましたが、それは「花壇」ではなく、もっとケーブルの駅に 近接する場所にあったと考えておりましたので、今回のそちらのお話は、大変驚きました。ご紹介感謝いたします。
ただし、そうなるといくつかの疑問が生じます。それは、1入手されたという写真においてその施設の名称は摩耶花壇なのでしょうか?それとも摩耶食堂なので しょうか?、2あるいは摩耶食堂は摩耶花壇のレストランとご説明の通り、摩耶花壇の一部(の特徴)なのでしょうか?、もしそうだとすると3摩耶花壇はこの サイト(摩耶花壇:http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20151021)等を拝見する限り、宿泊施設、つまり旅館と考えられま すが、やはりそうなのでしょうか?、4これは蛇足ですが、後に療養所になったという話は本当でしょうか?私は30年近く前にマヤカンに宿泊した際に、マヤ カン自体が療養所だったという噂話を聞きましたが、そんな事実は確認できませんでした。摩耶花壇もそうなのではないかという疑念を持っております。 以上、長々失礼いたしました。こんなブログを公開し ておりますが、マヤカンや摩耶山全体の状況について、如何に知らないことが多いかを認識させられます。またご教示いただければと存じます。今回はありがと うございます。
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moto
at 2016-08-26 22:50
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偶然このブログにたどりつきました。私はS30年代生まれで祖父はブログにも出てくる摩耶一茶のあるじでした。曽祖父が摩耶山で旅館や店を始めたとのことです。当然子供のころ摩耶観光ホテルや、直営店、バンガロー村、観覧車、当時から廃墟だった摩耶花壇などでよく遊びました。今は東京在住なので懐かしくみさせてもらいました。
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nk8513 at 2016-08-28 11:46
コメントありがとうございます。私は平成元年に初めて摩耶山に参りまして、マヤカンやその周辺地区の状況に大変驚き、また興味をもった者です。マヤカンが15年ほど前から有名廃墟として注目される中で、摩耶山を含めてその近現代の歴史を整理をしておきたいと考え、このブログを開設いたしました。最初に摩耶山に行った当時、確か摩耶一茶は近くにあった千万弗展望台やバンガロー等とともに、すでに閉鎖されていたように記憶しておりります。ですので、摩耶山が栄えていた頃の様子を実際に見てりませんもので、きっと事実誤認のような事も少なくないと思います。今後も折を見て更新を続けていきますので、お気づきの点などありましたらご教示いただければ有り難いです。では失礼いたします。
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